そして、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が娘とともに北朝鮮メディアに登場する機会が増えていることに言及し、「キム総書記にも親として子を愛する気持ちがあることを私たちは感じ取っています。同じ気持ちを被害者の親世代が持っていることを忘れないでほしい」と訴えました。
拉致問題は今年、最初の事件の発生から46年が経過しますが、全面解決への展望は開けないままで、集会では最後に、親の世代が存命のうちにすべての被害者の帰国が実現するよう、政府の取り組みと北朝鮮の決断を求める決議を採択しました。
またG7広島サミットで、各国首脳に即時解決に向けた理解と協力を求め、全面的な支持を得たと説明したうえで、国際社会への働き掛けと同時に、日本が主体的に行動することが重要で、条件を付けずにいつでもキム・ジョンウン総書記と直接向き合う決意だと強調しました。 そして「現在の状況が長引けば長引くほど、日朝間の実りある関係を樹立することは、困難になってしまいかねない。日朝間の懸案を解決し、共に新しい時代を切り開いていく観点から私の決意をあらゆる機会を逃さず伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と述べました。
拉致の被害に苦しめられてきた家族会が、条件付きとは言え北朝鮮への“支援”に踏み込んだのは、結成から26年が経過した会の歴史で初めてのことです。 拉致・核・ミサイルの懸案を抱える北朝鮮に対し、日本政府は、国連安全保障理事会の決議に基づく制裁に加え、独自の制裁として輸出入の全面禁止措置などを実施していますが、国際機関を通じて北朝鮮に人道支援を行うことは「例外扱い」とされています。 今回、家族会が踏み込んだ背景には、被害者との再会を果たせないまま亡くなるメンバーが相次ぎ、核やミサイルの問題の解決を待つ時間的猶予がない中、人道支援をカードに突破口を開きたい切実な思いがあります。
新しい方針は、核やミサイルの問題とは切り離して拉致問題の早期解決を目指すことを意味するだけに、当初、家族の間にはアメリカ側の反応を不安視する声もありましたが、異論を唱える関係者はいなかったということです。
横田早紀江さんは今年、3年前に87歳で亡くなった夫、滋さんと同じ年齢になりました。 今月18日、都内で開かれた集いに3か月ぶりに参加した早紀江さんは、体調不良のため初めて入院していたことを明かしました。 「本当に思いがけない初めての入院ということになって、治療も早く受けることができて何とか助けていただくことができましたこと、本当に感謝いたします」と振り返った早紀江さん。 「もう2年だけは何とかもたせてください。めぐみちゃんのことをもうちょっと頑張りますから、お願いします」と声を振り絞りました。 老いに直面し体調に不安を抱える被害者の親世代。 「子どもとの再会まで、もう時間はない」という切迫感はこれまでになく強まっています。
横田早紀江さん「岸田首相とキム総書記の1対1の話し合い願う」
岸田首相 “条件付けずキム総書記と直接向き合う決意”と強調
【家族会 踏み込んだ方針と強まる切迫感】
今年の活動方針に「帰国実現なら人道支援に反対せず」明記
アメリカ政府高官らも異論唱えず
家族の老い 強まる切迫感
集会に出席した岸田総理大臣は、すべての被害者の1日も早い帰国に向け、日朝首脳会談を早期に実現させるため、みずからが直轄するハイレベル協議を始めたいという考えを示しました。
横田拓也さん「親世代が高齢化 残されている時間はない」