エルドアン氏は、最大都市イスタンブールで26日に演説し「これまで築き上げたものの上に、我々はさらに積み重ねていく。私たちの国をあらゆる分野でさらに大きく先へと進める」と述べ、国のさらなる成長を誓いました。
一方、27日、首都アンカラで演説したクルチダルオール氏は「私は宮殿に住むことに興味はない。皆さんのように慎み深く暮らし皆さんのことを考える。もし問題を解決できないのであれば、私が政治の世界にいる意味はない」と述べ、国民に寄り添った政治の実現を約束しました。
現職のエルドアン氏に投票するという61歳の男性は「彼がこの国と国民のために一生懸命尽くしてくれたため、われわれは世界での発言力を手に入れました。新型コロナが流行したときや大地震が起きたときも必要な支援をしてくれました」と話していました。 また、39歳の女性は「エルドアン大統領はイスラム諸国のリーダーのような人で私たちは彼の強さを見てきました。買い物が大変になるなど経済に問題があるのは確かですが、いずれ解決するはずです」と話していました。 一方、クルチダルオール氏に投票するという22歳の男性は「エルドアン大統領だけが決定権を握っているため経済が危険な状況にあります。誰かが何か改善しようとしても彼しか決められないのです。子どもたちを弁当箱が空のまま学校に通わせなければならないほど人々は今、困っています」と話していました。 また、42歳の女性は「エルドアン大統領は当初とてもよく国を治めていましたが、もう退くべきです。1人の人間が権力の座に長くいる状態を変えて民主的な国に住みたいのです」と話していました。
今回の大統領選挙では、クルド系の最大政党「緑の左派党」がクルチダルオール氏への支持を表明していて、今月14日の投票ではクルド系住民が多い東部の14の県でクルチダルオール氏の得票がエルドアン氏を上回りました。 また、同じ日に行われた議会選挙で「緑の左派党」は480万票余りを獲得して野党第2党となっています。 選挙前日の13日に「緑の左派党」が最大都市イスタンブールで開いた大規模な集会では、「バイバイ、エルドアン」などといったシュプレヒコールが上がりクルチダルオール氏への投票を呼びかけていました。 クルチダルオール氏への選挙協力の背景には、エルドアン政権下でのクルド系政党への締めつけや、政権交代によって収監されているデミルタシュ元党首の解放につながることへの期待があります。 集会に参加した支持者からは「長い間この国になかった公正が実現し、デミルタシュ氏が自由になるためにクルチダルオール氏に投票する」とか、「クルド人として投票によってエルドアン氏を退場させられると信じている」といった声が聞かれました。 ただ、クルチダルオール氏を統一候補として擁立した6つの野党の中にはクルド系政党との協力を嫌うトルコ民族主義の政党もあり、野党の中でも立場に隔たりがあります。 さらに、1回目の投票で3位だった民族主義を掲げるオアン氏はクルド系政党との協力を拒否し、決選投票ではクルチダルオール氏ではなくエルドアン氏への支持を表明しています。 このためクルド系政党は危機感を募らせていて、23日には「緑の左派党」のメンバーがイスタンブールの市場で「エルドアンのワンマン政治を終わらせよう」などと訴え、投票を呼びかけていました。
間主任研究員は14日の投票で苦戦が伝えられていたエルドアン大統領の得票が野党の統一候補のクルチダルオール氏を5ポイント近く上回ったことについて「経済状態が悪かったためにかなり支持率が低下したものの、最後のところで、どっちつかずの人を、民族主義的なレトリックで呼び戻してラストスパートをかけたのではないかと思う。圧倒的にメディアの力を使い、巻き返し戦術が展開された」と指摘しました。 そのうえで「野党側としては5ポイント差というのをできるだけ縮めようとしているが、かなり厳しい状況だと思う。野党が勝つ確率は少ないと考える」と述べました。 その理由として、少数民族のクルド系の住民は決選投票でもクルチダルオール氏を支持するものの、1回目の投票で3位だった民族主義を掲げるオアン氏の5%余りの票は支持が分かれていることなどをあげました。 そのうえでエルドアン大統領が「国家の資源を徹底的に使って優位に選挙を進めている」と分析しています。 一方、選挙結果が国際情勢に与える影響については「エルドアン大統領が勝つかクルチダルオール氏が勝つかによって、若干、欧米との関係のニュアンスは変わるかもしれないが、トルコが国際関係の中でどういう役割を果たすかは地理的な条件でかなり決まってくる」と指摘しました。 このうちロシアとの関係については、トルコにとって「地政学上も、経済やエネルギーの関係からもロシアとの関係を悪化させることはありえない」としたうえで「クルチダルオール氏が勝った場合もウクライナとロシアの仲介は続けていくと思う」と述べました。 一方、トルコの内政的にはエルドアン政権のもとで権威主義的になっている政治システムが続くかどうかが問われることになると指摘したうえで、エルドアン政権が続く場合、物価高騰の中でも異例ともいえる政策金利の引き下げを続け、通貨リラの暴落を招いた経済政策がどうなるかが注目されるとしています。
市民は「強さ見てきた」「権力の座に長くいる状態変えたい」
決選投票 カギはクルド系有権者
専門家 エルドアン大統領優位と分析