病院からは夜間の人手も少なく、看護が難しいことなどを理由に、小さい子どもの場合は「付き添いが必須」だと説明を受けたということです。
「私が24時間病院に缶詰になれば、長女はどうしたらいいの?」 頭が真っ白になったと振り返ります。
「病院のみなさんには一生懸命してもらっていた」という露木さんが、制度面でひとつどうしても納得いかなかったことがあります。 それは、病院から求められたにもかかわらず、「付き添いを希望する」という申請書を、2週間ごとに提出しなければならなかったことです。
「仕事との両立など、家族の生活が立ちゆかなくなると子どもの治療もままならなくなるので、付き添うかどうかは希望に応じて選べるようにしてほしいです」
主な項目の結果は、以下の通りでした。 ▽「付き添い入院」を希望したかどうか 「希望するしないに関わらず付き添いが必須だった」…70.8%、 「希望した」…27.7% ▽「付き添いを病院から要請されたか」
「要請されていない」…20.9% 「付き添いが必須」が7割、「付き添いを要請された」も8割近くと、希望に関わらず医療機関からの要請に応じて付き添う親が多い状況がうかがえます。 ▽付き添い中に子どものケアに費やした時間(1日あたり)
「15~18時間未満」…12.7% 「12~15時間未満」…11.7% 「12時間以上」と答えた人はあわせて61.3%に上りました。 ▽「付き添い中に行ったケアの内容」 「食事の介助」など身の回りの世話のほか、「吸引・吸入」や「バイタル確認」、「心電図モニターの取り付け」、「胃管交換」など、医療的ケアを含むさまざまなケアを担ったとの回答がありました。 こうしたケアの中には、「療養上の世話」として原則は看護師などが行う業務に位置づけられているものも含まれ、現場の人手不足を付き添う親が補っている現状が伺えるということです。 ▽「付き添い入院中の食事の調達先」 「主に院内のコンビニや売店」…65.1% 「主に院外のコンビニや売店、スーパー」…8.5% 「主に病院から付き添い者に提供される食事」…5.6% 付き添う親への病院から食事の提供は、実施されている病院も一部あるものの、まだ少ないことがうかがえます。 ▽「病室での睡眠について」
「病院からレンタルした簡易ベッド」…32.9% 「ソファー、いす」…6.4% 自由記述には、モニターのアラーム音や看護師の巡回の音、同じ病室の子どもの泣き声などでゆっくり眠れないとの回答もあったということです。 また、「付き添い中に体調を崩したことがある」と回答した人は51.3%に上ったということです。
佐賀市にある佐賀大学医学部附属病院では、入院中の子どもに付き添う保護者に対して、支援団体から提供されるカレーやスープの缶詰や衛生用品などが入ったセットを毎月配っていて、この日も看護師がそれぞれの病室に届けていました。
この病院では▽家族が寝るための簡易ベッドを有料で貸し出しているほか、▽親の負担を軽減するため保育士が子どもを一時的に預かるなどの対応をとっています。
そのうえで「付き添う家族に食事を提供するなど、病院の環境を変えていく必要がある。一方、どうしても付き添えない家族もいるので、そういう子どもには付き添いがなくても安心して入院できる体制を整えていくべきで、国に対策を考えていただきたい」と話していました。
要望書を受け取った、こども家庭庁母子保健課の山本圭子課長は「調査や要望の内容をしっかり確認し、厚生労働省とこども家庭庁で連携しながら、何ができるのか検討したい」と述べました。
「こうやって写真を眺めていると、きのうのことのように思い出しますね」 玲恩くんの治療のため、国内の複数の病院のほか、ベルギーやフランスの病院でも付き添いを経験しました。フランスの病院では、付き添う親にも無料で朝食が提供され、昼食や夕食も必要に応じて注文できたほか、病室には親のための備え付けのベッドもあったということです。 また、病院内で親がマッサージやカウンセリングを受けられるなど、子どもから離れて体を休めたり気分転換したりするための環境も整備されていたということです。 「付き添う私たちの健康面や食事面も一緒に考え大事にしてくれていると感じられて配慮がありがたかったし、カルチャーショックでした」
その理由について、かつて玲恩くんに言われたことばを思い出しながら話してくれました。
親たちの環境 実態は
医師からも環境の改善求める声
「今の制度だと存在が無いことに」
国に要請「改善へ向けて検討会設置を」
海外の現状
病院のみなさんは本当に一生懸命してくださっているし、つらいのはこの子だから、親の自分が弱音を吐くわけにはいかないーーそう思いながらも、プライバシーも十分になく食事や睡眠もままならない日々に、“戦場”に行くような過酷さを感じていたと親は言います。
「付き添い入院」の実態とは?環境の改善へ向けた動きは?
当事者と医療現場、支援団体の動きをまとめました。
「付き添いは必須」