侵攻しんこう開始かいし直後ちょくごの2022年ねん3月つきプーチン政権せいけんは情報じょうほう統制とうせいの強化きょうかにつながる改正かいせい法ほうを施行しこうし、ロシア軍ぐんの活動かつどうについて誤あやまった情報じょうほうを拡散かくさんしたり、軍ぐんの信用しんよう失墜しっついにつながる行為こういを呼よびかけたりしたと当局とうきょくがみなした場合ばあいなどに、厳罰げんばつを科かすとしました。この法律ほうりつによって政治せいじ家かやジャーナリストなどが「うその情報じょうほうを広ひろめて軍ぐんの信頼しんらいを失墜しっついさせた」として実刑じっけい判決はんけつを受うけています。

また、ロシアの人権じんけん団体だんたいによりますと、これまでに軍事ぐんじ侵攻しんこうや予備よび役やくの動員どういんに抗議こうぎして拘束こうそくされた市民しみんの数かずは、延のべおよそ2万まん人にんに上のぼるということです。

プーチン政権せいけんは、去年きょねん12月つきには外国がいこくのスパイを意味いみする「外国がいこくの代理人だいりにん」の指定してい対象たいしょうの拡大かくだいにつながる法律ほうりつを新あらたに施行しこうし「外国がいこくの影響えいきょう下かにある」と当局とうきょくがみなした個人こじんや団体だんたいも対象たいしょうになりました。

これに合あわせる形かたちで治安ちあん機関きかんのFSB＝連邦れんぽう保安庁ほあんちょうは、予備よび役やくの動員どういんをめぐる情報じょうほうや軍ぐんの内部ないぶ情報じょうほうなどを第三者だいさんしゃに提供ていきょうすることを禁きんじる命令めいれいを出だし、戦況せんきょうの劣勢れっせいやロシア兵へいが置おかれた劣悪れつあくな環境かんきょうなど、政権せいけんにとって都合つごうの悪わるい情報じょうほうを統制とうせいする動うごきと受け止うけとめられています。

ロシア法務省ほうむしょうによりますと、2013年ねんから2月つき17日にちまでに「外国がいこくの代理人だいりにん」に指定していされた個人こじんや団体だんたいはあわせて552で、去年きょねん2月つきからの1年間ねんかんだけで全体ぜんたいの4割わり近ちかい216に上のぼります。

最近さいきんでは、

▽若者わかものの間まで人気にんきの歌手かしゅで軍事ぐんじ侵攻しんこうを非難ひなんする反戦はんせん歌かを歌うたい続つづけるゼムフィラさんのほか、

▽性的せいてきマイノリティーの人ひとたちの人権じんけん保護ほごに取り組とりくむ活動かつどう家かまで「外国がいこくの代理人だいりにん」に指定していされ、多様たよう性せいを排除はいじょする社会しゃかいに閉塞へいそく感かんが漂ただよっています。

プーチン政権せいけんは国内こくないの人権じんけん団体だんたいへの抑圧よくあつも強つよめています。

また▽1976年ねんにノーベル平和へいわ賞しょう受賞じゅしょう者しゃのサハロフ博士はかせなどが立たち上あげ、ロシアで最もっとも歴史れきしがあるとされる人権じんけん団体だんたい「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」も、1月つき裁判所さいばんしょから解散かいさんを命めいじられました。

プーチン政権せいけんに批判ひはん的てきな姿勢しせいを貫つらぬく社会しゃかい学者がくしゃのグドゥコフ氏しはNHKの取材しゅざいに対にたいして「政権せいけん側がわは威嚇いかくすることで人々ひとびとの意見いけん表明ひょうめいなどの権利けんりを失うしなわせながら、国民こくみん、社会しゃかいへの弾圧だんあつを進すすめている。体制たいせいはただ強権きょうけん的てきになりつつあるのではなく、独裁どくさい的てきになりつつある」と危機きき感かんを強つよめています。

ロシアの独立どくりつ系けいの世論せろん調査ちょうさ機関きかん「レバダセンター」が今月こんげつ2日にちに発表はっぴょうした調査ちょうさ結果けっかでは、ロシアがウクライナで行おこなっている軍事ぐんじ作戦さくせんについて「明確めいかくに支持しじする」と「どちらかといえば支持しじする」が合あわせて75％に上のぼり「明確めいかくに支持しじしない」「どちらかと言いえば支持しじしない」を合あわせて19％を大おおきく上回うわまわっています。

ロシア国内こくないでは、前線ぜんせんで戦たたかっているとされるロシアの兵士へいしを英雄えいゆうとしてたたえるポスターが大通おおどおりなどに掲かかげられているほか、軍事ぐんじ侵攻しんこうを支持しじするシンボルとなっている「Z」マークのステッカーが貼はられたバスや車くるまなども走はしっていて、政権せいけん側がわは、ウクライナ侵攻しんこうは今いまや祖国そこくを防衛ぼうえいする戦たたかいになっているとして国民こくみんの愛国あいこく心しんに訴うったえる取り組とりくみを進すすめています。

このうちロシア極東きょくとうのサハリン州しゅうでは、今月こんげつ18日にち、州しゅう政府せいふや退役たいえき軍人ぐんじんの団体だんたいなどが主催しゅさいしたロシア軍ぐんを支援しえんするための集会しゅうかいが行おこなわれました。この中なかでは、「Z」マークやロシアの国旗こっきを掲かかげた車両しゃりょうおよそ1200台だいが40キロほどの道路どうろを列れつになって走はしり軍事ぐんじ侵攻しんこうを支持しじしようと訴うったえかけていました。

参加さんかした56歳さいの男性だんせいは「ウクライナでわれわれの国益こくえきを守まもっている兵士へいしたちに、われわれが彼かれらとともにあり心しんから応援おうえんしていることを知しってもらうことは重要じゅうようだ。こんなにたくさんの人ひとがここに来きている。ロシア人じんはみんな結束けっそくしている」と話はなしていました。

参加さんかした女性じょせいは「子こどもたちと一緒いっしょに40キロ分ぶんのキャンドルをつくりました。ざんごうの中ちゅうでは照明しょうめいなどが必要ひつようです」と話はなしていました。この女性じょせいが勤務きんむする児童じどうセンターでは子こどもたちに兵士へいしへの激励げきれいの手紙てがみも書かかせているということです。

また、年金ねんきん生活せいかつ者しゃの男性だんせいは、「もし撤退てったいするようなことになればそれは破滅はめつを意味いみすることはみんな分わかっている。そんなことになればこれまでの労力ろうりょくとカネがむだになる。前進ぜんしんあるのみだ」と話はなし、ロシア軍ぐんの勝利しょうりに向むけて戦たたかい抜ぬくことができるよう国民こくみんの結束けっそくが必要ひつようだと強調きょうちょうしていました。

この女性じょせいは現在げんざいの生活せいかつについて「今いまのところ悪わるくない。景気けいきは少すこしずつ回復かいふくしている」と話はなし、制裁せいさいの市民しみん生活せいかつへの影響えいきょうは限定げんてい的てきだとしていました。また会社かいしゃ員いんの女性じょせいは軍事ぐんじ侵攻しんこうを支持しじする一方いっぽう、動員どういんされた知人ちじんの安否あんぴを心配しんぱいしていて「ロシアのために、損失そんしつを少すくなく抑おさえ、できるだけ早はやく終おわってほしい」と話はなしていました。

25歳さいの会社かいしゃ員いんの男性だんせいは、軍事ぐんじ侵攻しんこうを支持しじするかどうかについて明確めいかくな回答かいとうは避さけたいとした上うえで「できるだけ早はやくこの状況じょうきょうが終おわることを望のぞむ。結局けっきょくのところ、ロシアとウクライナの双方そうほうにとって悪わるいことだ」と話はなしていました。

さらに教育きょういく関係かんけいの仕事しごとについている30歳さいの女性じょせいは「仕事しごとがしづらくなった」と話はなしその理由りゆうとして、教育きょういく現場げんばで▽子こどもたちに兵士へいし宛あての手紙てがみを書かかせたり、▽支援しえん物資ぶっしを集あつめたりするなど子こどもたちの愛国あいこく心しんを高たかめる活動かつどうが広ひろがっていることを挙あげました。その上うえで「軍事ぐんじ作戦さくせんがすべて終了しゅうりょうし何なんらかの見通みとおしがつくか、あらゆる面めんでの損失そんしつが最小さいしょう限げんに抑おさえられることを望のぞむ」と話はなしていました。

ロシアからはアメリカのハンバーガーチェーン大手おおて、マクドナルドやコーヒーチェーン大手おおてのスターバックスが撤退てったいしました。いずれも市民しみんに人気にんきがありましたが、店舗てんぽがあった場所ばしょには店みせのロゴやメニューが似にていると指摘してきされるロシア資本しほんの店みせが新あらたに開業かいぎょうし、多おおくの客きゃくでにぎわっていました。

買い物かいもの客きゃくや観光かんこう客きゃくが行き交いきかう首都しゅとモスクワの大通おおどおりでは、欧米おうべいや日本にっぽんの人気にんきファッションブランド店舗てんぽが照明しょうめいを落おとしたままとなっていて再開さいかいの見通みとおしは立たっていません。

また、市民しみん生活せいかつを支ささえる食料しょくりょう品ひん店てんで、ものが不足ふそくしている様子ようすは見みられません。飲み物のみものが置おかれた棚たなには侵攻しんこう開始かいし直後ちょくごにすべてのビジネスを撤退てったいすると発表はっぴょうしたアメリカの大手おおて飲料いんりょうメーカーなどの商品しょうひんも多おおくならんでいました。

こうした商品しょうひんはロシアで生産せいさんされなくなったものの、隣国りんごくのカザフスタンやベラルーシなどから輸入ゆにゅうされ、依然いぜんとあまり変かわらない価格かかくで売うられているといいます。

一部いちぶの商品しょうひんは輸入ゆにゅう品ひんも仕入しいれることが難むずかしくなっているとしていますがそれでも類似るいじ商品しょうひんは多おおくあるとして食料しょくりょう品ひん店てんの店長てんちょうは、「原則げんそく、品しなぞろえに変化へんかはない」と話はなしています。

買い物かいものに訪おとずれた26歳さいの会社かいしゃ員いんの男性だんせいは、「この店みせを見みても制裁せいさいの影響えいきょうはないと思おもう。実感じっかんもないと言いえる。日常にちじょう生活せいかつで必要ひつようなものは基本きほん的てきに棚たなにならんでいて問題もんだいは感かんじない」と話はなしていました。

また、46歳さいの男性だんせいは、「値段ねだんが高たかくなったものや店みせからなくなったものもあるが事態じたいは悪化あっかしていない。飢うえることはない」と話はなしていました。

民間みんかんの調査ちょうさ会社かいしゃ「アフトスタット」によりますとロシアの自動車じどうしゃ市場しじょうでは、ヨーロッパメーカーのシェアが、去年きょねん1月つきと2月つきには、およそ28％だったのが11月つきと12月つきには8％ほどと4分ぶんの1ほどに減へったということです。同おなじように、日本にっぽんメーカーもおよそ18％から7％ほどと3分ぶんの1に減へったとしています。

一方いっぽう、ロシアの国産こくさん車しゃは、20％から42％と2倍ばいほどになり、中国ちゅうごくメーカーもおよそ10％から30％ほどと3倍ばいに増ふえたということです。

中国ちゅうごくの自動車じどうしゃメーカー「奇瑞きずい自動車じどうしゃ」はロシア国内こくないに120か所かしょほどの販売はんばい店てんがあり、このうち2020年ねんには極東きょくとうの中心ちゅうしん都市としウラジオストク市内しないにもオープンしました。休日きゅうじつには朝あさから客きゃくが途切とぎれることなく訪おとずれ、販売はんばい担当たんとう者しゃのアレクサンドル・パブリュク氏しは「毎日まいにち、毎月まいつき、中国ちゅうごく車しゃの認知にんち度どは高たかまり今後こんごの見通みとおしは非常ひじょうに良よい。日本にっぽんや欧米おうべいのブランドも去さり、いま、中国ちゅうごく車しゃにとって大おおきな飛躍ひやくの場ばになっている」と話はなしていました。

これまで複数ふくすうの日本にっぽん車しゃを買い替かいかえてきた40代だいの会社かいしゃ員いんの女性じょせいは、この日ひ、初はじめて「奇瑞きずい自動車じどうしゃ」のSUV＝多た目的もくてきスポーツタイプの車くるまを購入こうにゅうしました。

この女性じょせいは「今いまこの国くにで起おきていることを考かんがえると、日本にっぽん車しゃを買かっても車くるまを修理しゅうりしたり、必要ひつような部品ぶひんや見みつけたりすることが難むずかしく、すぐに整備せいびできるという保証ほしょうもない。しかし中国ちゅうごく車しゃにその心配しんぱいはない」と話はなし、ロシアと一層いっそう関係かんけいを深ふかめる中国ちゅうごくの自動車じどうしゃに対にたいする信頼しんらいが高たかまっていると強調きょうちょうしていました。

調査ちょうさは企業きぎょうのデータベースをもとに去年きょねん4月つきの時点じてんでロシアで事業じぎょうを展開てんかいしていたEU＝ヨーロッパ連合れんごうやG7＝主要しゅよう7か国かこくからの1404社しゃを対象たいしょうに実施じっしされました。このうち去年きょねん11月つき末まつまでに1社しゃでも子会社こがいしゃを売却ばいきゃくした企業きぎょうは120社しゃで全体ぜんたいのおよそ8.5％にとどまったことがわかったということです。

この120社しゃを国くに別べつでみると

▽最もっとも多おおいのがアメリカの25％で

▽フィンランドが12.5％、

▽イギリスが10.8％、

▽日本にっぽんは5.8％だということです。

また、ロシアで事業じぎょうを続つづけている企業きぎょうは

▽ドイツが19.5％、

▽アメリカが12.4％で、

▽日本にっぽんは7％だということです。

研究けんきゅうチームはロシアを撤退てったいした企業きぎょうはロシアで事業じぎょうを続つづけている企業きぎょうと比くらべて収益しゅうえき性せいが低ひくく、従業じゅうぎょう員いんが多おおいことが特徴とくちょうだとしています。その上うえでロシアで事業じぎょうを展開てんかいしていた多おおくの企業きぎょうは売却ばいきゃくの手続てつづきをまだ完了かんりょうしていないか、事業じぎょうを続つづけているとしています。

この調査ちょうさ結果けっかについてウクライナのポドリャク大統領だいとうりょう府ふ顧問こもんは、2月つき11日にち、SNSでロシアで事業じぎょうを行おこなう企業きぎょうが納おさめる税金ぜいきんがウクライナ侵攻しんこうの戦費せんぴになっていると指摘してきした上うえで「あらゆるビジネスがヨーロッパにおける侵略しんりゃく戦争せんそうを行おこなう張本人ちょうほんにんであるプーチン氏しとその側近そっきんの懐ふところを潤うるおしている。欧米おうべい側がわは厳きびしい態度たいどをとるべきだ」と投稿とうこうしました。

モスクワ大学だいがくの教授きょうじゅでロシアの社会しゃかい経済けいざいを専門せんもんにするナタリア・ズバレビッチ氏しは、2月つき3日にちNHKのインタビューで「去年きょねん始はじまった危機ききは高たかい確率かくりつでことしも続つづく。ゆっくりと、しかし財政ざいせい赤字あかじは確実かくじつだ」と予測よそくしました。

最大さいだいの原因げんいんとして挙あげたのが、欧米おうべいなどがロシア産さんの原油げんゆや石油せきゆ製品せいひんに上限じょうげん価格かかくを設定せっていする制裁せいさい措置そちを導入どうにゅうしたことなどによるロシア産さん原油げんゆの価格かかく下落げらくです。ズバレビッチ氏しは2022年ねんの原油げんゆと天然てんねんガスの収入しゅうにゅうは歳入さいにゅう全体ぜんたいの42％を占しめるとした上うえで「国家こっか予算よさんに問題もんだいが出でてくることは間違まちがいない。多額たがくの損失そんしつを被こうむることになる」と指摘してきしました。

一方いっぽう、去年きょねんの財政ざいせい支出ししゅつは当初とうしょ予算よさんよりおよそ7兆ちょうルーブル、日本にっぽん円えんでおよそ13兆ちょう円えん多おおく、公表こうひょうされた統計とうけいがないものの「兵器へいきの製造せいぞう量りょうは増加ぞうかしている」などと述のべ、大だい部分ぶぶんは軍備ぐんびに充あてられたとみています。

そして、ことしの国くにの予算よさんのうち国防こくぼう関連かんれん費ひがあわせて9兆ちょうルーブル余あまり、日本にっぽん円えんで16兆ちょう円えん余あまりで、歳出さいしゅつ全体ぜんたいの30％以上いじょうとなり、ロシアがウクライナ南部なんぶのクリミアを一方いっぽう的てきに併合へいごうした2014年ねん当時とうじと同おなじ規模きぼの増額ぞうがくになると指摘してきしました。

これについてズバレビッチ氏しは政権せいけんの支持しじ基盤きばんである年金ねんきん受給じゅきゅう者しゃなどに向むけた補助ほじょ金きんは維持いじしながらも「教育きょういくや保健ほけんなど社会しゃかい政策せいさくの関連かんれん資金しきんを削けずり、道路どうろなどのインフラ開発かいはつ計画けいかくを減へらすだろう」と述のべ、財政ざいせい支出ししゅつを絞り込しぼりこんだ上うえで政府せいふ系けいの基金ききんを取り崩とりくずしたり一部いちぶの法人ほうじん税ぜいを引き上ひきあげたりして軍事ぐんじ侵攻しんこうを続つづけるため戦費せんぴを捻出ねんしゅつしていくとの見方みかたを示しめしました。

また、経済けいざい制裁せいさいのほか外資がいし系けい企業きぎょうの撤退てったいや活動かつどう停止ていしによる影響えいきょうについてズバレビッチ氏しは「問題もんだいはあるが品しな不足ふそくはない」と述のべ、政府せいふが認みとめる並行へいこう輸入ゆにゅうによって、価格かかくは上あがったものの、衣料いりょう品ひんや携帯けいたい電話でんわなどは市場しじょうに出回でまわり、店頭てんとうにあると説明せつめいしました。

ただ、「半導体はんどうたいの輸入ゆにゅうは極きわめて難むずかしくなった。輸入ゆにゅうできない機器ききをどう交換こうかんするか。大半たいはんは中国ちゅうごく製品せいひんとなり、それ以外いがいはロシアで調達ちょうたつしようとするが、すべてを置き換おきかえることはできない」と述のべ、ハイテク分野ぶんやで深刻しんこくな問題もんだいが生しょうじているとしています。

そして「悪化あっかの速度そくどが遅おそいので、普通ふつうの人ひとたちは気付きづかない。ロシアの航空こうくう会社かいしゃが実際じっさいどれほど深刻しんこくな問題もんだいを抱かかえているか国民こくみんは理解りかいせず、政権せいけんの説明せつめいをうのみにして、すべて順調じゅんちょうだと考かんがえている」と述のべ、表面ひょうめん化かしていないところで事態じたいは悪化あっかしていると危機きき感かんを表あらわしました。

さらに、軍事ぐんじ侵攻しんこうに伴ともなう動員どういんなどを受うけてこの1年間ねんかんでおよそ70万まん人にんがロシアを去さったという見方みかたを示しめし「人的じんてき資本しほんを失うしなったことで国くにの発展はってんは危あやぶまれている」とも指摘してきしました。

しかし、ズバレビッチ氏しは、軍事ぐんじ侵攻しんこうが年内ねんないに終おわる見通みとおしはなく、国内こくない経済けいざいは悪化あっかの一途いっとをたどると予測よそくした上うえで「抑圧よくあつによる恐怖きょうふ、『何なにも見みたくない、知しりたくない』という思おもいから、国民こくみんの抗議こうぎ行動こうどうは起おきない。悲かなしいかな、人々ひとびとは長期ちょうき間かんじっと耐たえ続つづけるのだろう」と述のべ、将来しょうらいに悲観ひかん的てきな見方みかたを示しめしました。

欧米おうべいとは一線いっせんを画かくし、ロシアによる侵攻しんこうを非難ひなんしない立場たちばをとってきたのが、アメリカと強つよい同盟どうめい関係かんけいにあるイスラエルです。

その背景はいけいには自国じこくの安全あんぜん保障ほしょうの問題もんだいがあります。イスラエルは、隣国りんごくのシリアでイスラエルと敵対てきたいするイランが支援しえんする武装ぶそう組織そしきが活動かつどうしているとし、たびたびそうした武装ぶそう組織そしきの拠点きょてんを攻撃こうげきしています。

イスラエルのこうした攻撃こうげきを黙認もくにんしているのが、シリアのアサド政権せいけんの後うしろ盾たてとなっているロシアだとされています。イスラエルとロシアのこうした関係かんけいはイランがロシアに無人むじん機きを供与きょうよしていることがわかったあとでも変かわらず、イスラエルの外相がいしょうが今月こんげつ、軍事ぐんじ侵攻しんこうが始はじまって以来いらい、初はじめてウクライナを訪問ほうもんした際さいも、ロシアを非難ひなんすることはありませんでした。

一方いっぽう、イスラエルは、多おおくのユダヤ人じんが暮くらすウクライナとも良好りょうこうな外交がいこう関係かんけいを築きずいていて、ゼレンスキー大統領だいとうりょうからはたびたび武器ぶきの供与きょうよを求もとめられていますが、性能せいのうの高たかい武器ぶきの供与きょうよを拒こばんできました。

こうした中なか、ゼレンスキー大統領だいとうりょうは今月こんげつ、ドイツのミュンヘンで開ひらかれた安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎでイスラエルを名指なざしして防空ぼうくうシステムの供与きょうよを求もとめました。

イスラエルでは去年きょねん末まつに、ネタニヤフ首相しゅしょうが政権せいけんの座ざに返り咲かえりざきましたが、ネタニヤフ首相しゅしょうはプーチン大統領だいとうりょうと親密しんみつな関係かんけいを築きずいていたとされていて、今後こんご、ロシアに対にたいしどのように対応たいおうしていくのかが焦点しょうてんとなっています。

イランは、ウクライナへの攻撃こうげきに使つかっている無人むじん機きをロシアに供与きょうよしていると欧米おうべいやウクライナ政府せいふから指摘してきされたあと、無人むじん機きの供与きょうよを認みとめましたが、供与きょうよした時期じきについては、侵攻しんこう開始かいしの前まえのことで「ウクライナでの戦争せんそうには協力きょうりょくしていない」と主張しゅちょうしています。

ただ、ロシアとの軍事ぐんじ協力きょうりょく自体じたいは、今後こんごも進すすめる方針ほうしんを示しめしていて、欧米おうべいはロシア国内こくないで無人むじん機きを共同きょうどう生産せいさんしたり、イランがミサイルを供与きょうよしたりする可能かのう性せいがあるとして、懸念けねんを強つよめています。

さらに、経済けいざい分野ぶんやでも協力きょうりょく関係かんけいが進すすんでいます。両国りょうこく政府せいふがいま進すすめているプロジェクトが、イランを経由けいゆして巨大きょだい市場しじょうのインドとロシアをつなぐ「南北なんぼく輸送ゆそう回廊かいろう」です。これは、船ふねのほか、鉄道てつどう、トラックを駆使くしした物流ぶつりゅうルートを確立かくりつしようとする構想こうそうで、20年ねん余あまり前まえに提唱ていしょうされたあと、多額たがくのインフラ投資とうしを必要ひつようとすることなどから、実際じっさいには進すすんでいませんでした。

しかし、ロシアは、ウクライナ侵攻しんこう後ご、欧米おうべいなどから経済けいざい制裁せいさいを科かされたことで、同おなじように制裁せいさいを科かされているイランとともに、制裁せいさいの影響えいきょうを免まぬかれる新あらたな経済けいざい圏けんを作つくろうと、力ちからを入いれ始はじめています。

こうした両国りょうこくの接近せっきんに対にたいし、イラン国内こくないでも警鐘けいしょうを鳴ならす動うごきが出でていて、去年きょねん11月つきには、元もと外交がいこう官かんらが共同きょうどう声明せいめいを発表はっぴょうし「ウクライナの人ひとたちが傷きずつけられる中なか、イランの対応たいおうが国益こくえきを十分じゅうぶんに考慮こうりょしているか疑問ぎもんだ」と訴うったえています。

欧米おうべい諸国しょこくとロシアの対立たいりつが続つづく中なか、どちらにもつかない立場たちばをとる「グローバル・サウス」と呼よばれる国々くにぐにが、今いま、注目ちゅうもくを集あつめています。

アジア、アフリカ、それにラテンアメリカなどのこれらの新興しんこう国こくや途上とじょう国こくは、冷戦れいせん時代じだいには「第だい三さん世界せかい」と呼よばれましたが、近年きんねん、国際こくさい社会しゃかいにおける存在そんざい感かんが増ましてきています。

【きっかけは軍事ぐんじ侵攻しんこう】。

去年きょねん3月つき2日にちの国連こくれん総会そうかいの緊急きんきゅう特別とくべつ会合かいごうでは、ロシアを非難ひなんし、軍ぐんの即時そくじ撤退てったいなどを求もとめる決議けつぎ案あんに35か国かこくが棄権きけん。軍事ぐんじ侵攻しんこうを支持しじしない一方いっぽう、ロシアに対にたいする経済けいざい制裁せいさいにも加くわわらない国々くにぐにの存在そんざいが注目ちゅうもくされました。

その代表だいひょう的てきな国くにの1つインドは1月つき、グローバル・サウスの国々くにぐにを対象たいしょうにしたオンラインサミットを開催かいさい。モディ首相しゅしょうは、参加さんかした125か国かこくの首脳しゅのうらに対にたいし、燃料ねんりょうや肥料ひりょうの価格かかく高騰こうとうに直面ちょくめんする途上とじょう国こくの声こえを国際こくさい社会しゃかいに反映はんえいさせると訴うったえました。

「われわれはウクライナでの紛争ふんそうなどの影響えいきょうをより強つよく受うけている。世界せかいの人口じんこうの4分ぶんの3を占しめるグローバル・サウスは、人類じんるいの未来みらいに最もっとも大おおきな利害りがい関係かんけいを有ゆうする」。

【“抜け穴ぬけあな”批判ひはんに反論はんろん】。

ロシアがウクライナへの軍事ぐんじ侵攻しんこうを始はじめて以降いこう、インドは伝統でんとう的てきな友好国ゆうこうこくであるロシアからの原油げんゆの輸入ゆにゅう量りょうを大幅おおはばに増ふやしていて、一部いちぶのメディアからは、「制裁せいさいの抜け穴ぬけあなになっているのではないか」といった指摘してきも出でています。

こうした中なか、ジャイシャンカル外相がいしょうは1月つき、オーストリアのテレビ番組ばんぐみで「侵攻しんこう以降いこう、ヨーロッパはインドの6倍ばいのエネルギーをロシアから輸入ゆにゅうした。ロシアからの輸入ゆにゅうが問題もんだいなら、ヨーロッパはなぜ輸入ゆにゅうをやめなかったのか」と述のべ、指摘してきはあたらないという見方みかたを示しめしました。

また、途上とじょう国こくは経済けいざい的てきな余裕よゆうがなく、原油げんゆが安やすく手てに入はいるのであれば、買かうのは当然とうぜんだとしたうえで、欧米おうべいとロシアのどちらの側がわにもつかない「グローバル・サウス」は、分断ぶんだんが進すすむ世界せかいの“パイプ役ぱいぷやく”になりうると、その存在そんざい意義いぎを強調きょうちょうしています。

「二に極きょく化かする世界せかいで最もっとも苦くるしんでいるのはグローバル・サウス。中間ちゅうかん的てきな存在そんざいの国くには、異ことなる立場たちばの国々くにぐにを話し合はなしあいのテーブルにつけることができる」

一方いっぽう、アフリカでは、欧米おうべいとロシア、中国ちゅうごくとの間まの外交がいこう的てきなせめぎ合あいが繰り広くりひろげられています。2022年ねん12月つき、アメリカはアフリカ諸国しょこくの首脳しゅのうをワシントンに招まねいて大だい規模きぼな首脳しゅのう会議かいぎを8年ねんぶりに開催かいさい。バイデン大統領だいとうりょうがことしアフリカを訪問ほうもんする考かんがえを示しめすなど、アフリカ諸国しょこくとの関係かんけい強化きょうかに力ちからを入いれています。

これに対にたいして中国ちゅうごくは1月つき、秦はた剛つよし外相がいしょうが就任しゅうにん後ご初はじめての外遊がいゆう先さきとしてアフリカを訪おとずれたほか、ロシアのラブロフ外相がいしょうも1月つきから今月こんげつにかけて相次あいついでアフリカを訪問ほうもんしています。

アフリカは国連こくれん加盟かめい国こくの3割わり近ちかくを占しめていて、国連こくれんでの投票とうひょうで存在そんざい感かんを示しめしています。また、電気でんき自動車じどうしゃなどの先端せんたん機器ききに必要ひつような希少きしょう資源しげんの産地さんちもあり、戦略せんりゃく的てきな重要じゅうよう性せいも増ましています。アフリカの国々くにぐにの多おおくは、大国たいこくからの外交がいこう攻勢こうせいを自国じこくの立場たちばを強つよめ、大国たいこくの協力きょうりょくと関与かんよを引き出ひきだすチャンスになると捉とらえています。

たとえば、南アフリカみなみあふりかは、2月つき17日にちから27日にちまでの予定よていで、ロシア、中国ちゅうごくの海軍かいぐんを招まねき、合同ごうどう軍事ぐんじ演習えんしゅうを行おこなっています。南アフリカみなみあふりかは、BRICS＝新興しんこう5か国かこくの一員いちいんとして、中国ちゅうごくやロシアとの関係かんけいを重視じゅうししています。

また、現げん政権せいけんの幹部かんぶにはアパルトヘイト＝人種じんしゅ隔離かくり政策せいさくの撤廃てっぱい運動うんどうで当時とうじのソビエトから支援しえんを受うけた経験けいけんを持もつ人ひともいます。このため、欧米おうべいの圧力あつりょくに屈くっせず、ロシアとの関係かんけいを維持いじすることには政権せいけん内ないでも一定いっていの支持しじがあります。

一方いっぽうで、南アフリカみなみあふりかはウクライナ情勢じょうせいについては、あくまで中立ちゅうりつの立場たちばだと主張しゅちょうし、1月つきには、アメリカのイエレン財務ざいむ長官ちょうかんの訪問ほうもんを受け入うけいれるなど、欧米おうべいとの関係かんけいも維持いじしようとするしたたかさも見て取みてとれます。