原告げんこくたちは28日にち、環境省かんきょうしょうを訪おとずれ、今いまも水俣病みなまたびょうで苦くるしむ人ひとたちの早期そうき救済きゅうさいに向むけて具体ぐたい的てきな協議きょうぎを求もとめることにしています。

昭和しょうわ30年代ねんだいから40年代ねんだいにかけて熊本くまもと県けんや鹿児島かごしま県けんに住すみ、その後そのご、関西かんさいなどに移り住うつりすんだ128人にんは、水俣病みなまたびょうに認定にんていされていない人ひとを救済きゅうさいする特別とくべつ措置そち法ほうで、住すんでいた「地域ちいき」や「年代ねんだい」によって救済きゅうさいの対象たいしょう外がいとされたのは不当ふとうだとして国くにと熊本くまもと県けん、それに原因げんいん企業きぎょうのチッソに賠償ばいしょうを求もとめる訴うったえを起おこしました。

27日にちの判決はんけつで、大阪おおさか地方ちほう裁判所さいばんしょは、特別とくべつ措置そち法ほうの基準きじゅん外がいでも水銀すいぎんに汚染おせんされた魚介ぎょかい類るいを継続けいぞく的てきに食たべた場合ばあいは、水俣病みなまたびょうにり患りかんする可能かのう性せいがあるとする初はじめての司法しほう判断はんだんを示しめして原告げんこく全員ぜんいんを水俣病みなまたびょうと認定にんていし、国くになどに1人にん当あたり275万まん円えん、合あわせておよそ3億おく5000万まん円えんの賠償ばいしょうを命めいじました。

判決はんけつについて、原告げんこくの弁護べんご団だんは、「原告げんこくを切り捨きりすてた施策しさくの誤あやまりを明確めいかくに断罪だんざいし、これまでの救済きゅうさい策さくの根本こんぽん的てき転換てんかんを迫せまるものだ」などとして、28日にち、原告げんこくとともに環境省かんきょうしょうを訪おとずれ、早期そうき救済きゅうさいに向むけて補償ほしょうや施策しさくなどの具体ぐたい的てきな協議きょうぎを求もとめることにしています。

水俣病みなまたびょうが公式こうしきに確認かくにんされてから67年ねんたった今いまも、救済きゅうさいされずに苦くるしみを訴うったえる人ひとたちがいる中なかで、今後こんごの国くにの対応たいおうが注目ちゅうもくされます。

裁判さいばん 3つの争点そうてん

今回こんかいの裁判さいばんでは、大おおきく3つの争点そうてんがありました。

【1.特別とくべつ措置そち法ほうの基準きじゅんの妥当だとう性せい】

平成へいせい21年ねんに施行しこうされた水俣病みなまたびょうに認定にんていされていない人ひとを救済きゅうさいする特別とくべつ措置そち法ほうでは、住すんでいた「地域ちいき」や「年代ねんだい」によって救済きゅうさいの対象たいしょうを区切くぎり、その基準きじゅんの妥当だとう性せいが争あらそわれました。

「地域ちいき」については、熊本くまもと県けんと鹿児島かごしま県けんが定さだめた水俣みなまた湾わん周辺しゅうへんの9つの市しと町まちの一部いちぶ地域ちいきに1年ねん以上いじょう住すんだ人ひとを対象たいしょうとしています。

これについて判決はんけつでは、「地域ちいきの外そとであっても、水銀すいぎんに汚染おせんされた魚介ぎょかい類るいを継続けいぞく的てきに食たべた場合ばあいには、水俣病みなまたびょうを発症はっしょうし得える程度ていどに水銀すいぎんを摂取せっしゅしたと推認するのが合理ごうり的てきだ」としています。

また、救済きゅうさい対象たいしょうの「年代ねんだい」については、チッソが有機ゆうき水銀すいぎんの排水はいすいを止とめた翌年よくねんの昭和しょうわ44年ねん11月つき末まつまでに生うまれた人ひととしています。

これについては、「少すくなくとも水俣みなまた湾わんに仕切しきり網もうが設置せっちされた昭和しょうわ49年ねん1月つきまでにその近ちかくでとれた魚さかなを多おおく食たべた人ひとについては、水銀すいぎんの摂取せっしゅが認みとめられる」としました。

「地域ちいき」と「年代ねんだい」、いずれについても特別とくべつ措置そち法ほうの基準きじゅん外がいでも水俣病みなまたびょうにり患りかんする可能かのう性せいがあるとする初はじめての司法しほう判断はんだんを示しめしました。

【2.原告げんこく全員ぜんいんを水俣病みなまたびょうと認定にんていできるか】

もう1つの争点そうてんは、原告げんこくが水俣病みなまたびょうの患者かんじゃといえるかどうかでした。

国くになどは、「水銀すいぎんに汚染おせんされた魚介ぎょかい類るいを食たべた量りょうなどは客観きゃっかん的てきな証拠しょうこが乏とぼしい」などと主張しゅちょうしていました。

判決はんけつでは、「汚染おせんされた魚介ぎょかい類るいを多おおく食たべたことによって、水俣病みなまたびょうを発症はっしょうし得える程度ていどに水銀すいぎんを摂取せっしゅしたと認みとめられる。原告げんこくの症状しょうじょうは水俣病みなまたびょう以外いがいに説明せつめいすることができない」などとして、128人にんの原告げんこく全員ぜんいんを水俣病みなまたびょうと認定にんていしました。

【3.改正かいせい前ぜん民法みんぽう規定きていの「除じょ斥期間きかん」が適用てきようされるか】

不法ふほう行為こういから20年ねんが経過けいかすると民事みんじ裁判さいばんで賠償ばいしょうを求もとめる権利けんりが消滅しょうめつするという、改正かいせい前まえの民法みんぽうに規定きていされていた「除じょ斥期間きかん」が適用てきようされるかも争あらそわれ、どの時点じてんで水俣病みなまたびょうだったと認みとめられるのかが争点そうてんとなりました。

国くになどは、「原告げんこくは、水俣病みなまたびょうが発生はっせいした熊本くまもと県けんや鹿児島かごしま県けんから転居てんきょ後ご、水銀すいぎんを摂取せっしゅしたとは認みとめられない。水俣病みなまたびょうの潜伏せんぷく期間きかんは通常つうじょう1か月かげつ程度ていど、長ながくとも1年ねん程度ていどであり、どれだけ長ながくとも最高裁さいこうさい判決はんけつで示しめされた4年ねん以内いないを超こえることはない」などと主張しゅちょうしていました。

判決はんけつでは、「検査けんさなどで確認かくにん可能かのうな症状しょうじょうが出でる時期じきと、自覚じかく症状しょうじょうが出でる時期じきが一致いっちするとは限かぎらない」などと指摘してきし、水銀すいぎんを摂取せっしゅしてから長期ちょうき間かんが経過けいかしたあとに発症はっしょうする遅おそ発はつ性せい水俣病みなまたびょうの存在そんざいを認みとめました。

そのうえで、不法ふほう行為こういで損害そんがいが発生はっせいしたと認みとめられる時期じきについては、「検査けんさなどに基もとづいて水俣病みなまたびょうと診断しんだんされた時ときである」などと、原告げんこくはいずれも診断しんだんされてから20年ねんはたっていないとして、除じょ斥期間きかんは適用てきようされず賠償ばいしょうを求もとめる権利けんりは消滅しょうめつしていないと判断はんだんしました。