「リーチサイト」は3年前の著作権法改正で規制の対象になりましたが、音楽について業界団体が本格的な対策に乗り出すのは初めてです。
大手レコード会社など65社が加盟する日本レコード協会によりますと、J-POPなどの海賊版を無料でダウンロードできるようURLなどの情報を提供する「リーチサイト」が近年、多くのアクセスを集めています。
しかし、著作権侵害にあたるとしてサイト側に削除を求めても応じない状態が続いているということで、協会は弁護士や調査会社と連携して複数の「リーチサイト」に対する法的措置に乗り出しました。
こうしたサイトの多くは海外サーバーを利用していることから海外の司法手続きを利用し、先月には最大規模のJーPOP専門サイトの運営者の氏名やIPアドレスが初めて開示されたということです。
「リーチサイト」は海賊版のダウンロードを助長するなどとして3年前の著作権法改正で規制の対象になりましたが、音楽に関して業界団体が本格的な対策に乗り出すのは初めてで、協会では今後、ほかのサイトについても運営者を特定し、刑事と民事の両面で厳正に対処することにしています。
音楽リーチサイト 現状は?
音楽の楽しみ方が、かつて主流だったCDからインターネットを利用したサービスに変化する中、音楽業界にとって「リーチサイト」は深刻な問題となっています。
日本レコード協会が去年11月、全国の12歳から69歳を対象に実施した「音楽メディアユーザー実態調査」によりますと、半年間に音楽を聴いた2500人余りが利用した方法は、複数回答で▼動画投稿サイト「YouTube」が64%と最も多く、次いで▼定額制音楽配信サービスが28%、▼CDと▼テレビがそれぞれ25%などとなっています。
協会によりますとインターネットを経由して音楽を楽しむ人が増える中、無料で楽曲の海賊版をダウンロードできるよう利用者を誘導する「リーチサイト」へのアクセスも多くなっているということです。
協会側が把握している12のリーチサイトでは、新曲がリリースされたその日のうちに海賊版をダウンロードできるURLが掲載され、最大規模のJ-POP専門リーチサイトのことし7月の月間アクセス数は150万にのぼっています。
このリーチサイトは協会が法的手続きを進めている間に閉鎖されましたが、調査会社の試算では著作権侵害による被害額は年間30億円にのぼるということです。
著作権法では、▼リーチサイトを運営する行為について5年以下の懲役や500万円以下の罰金を定めているほか、▼違法にアップロードされたものと知りながら繰り返しダウンロードする行為も2年以下の懲役や200万円以下の罰金が科されます。
日本レコード協会の楠本靖理事は「違法サイトが利用され、音楽の対価がアーティストに回らなくなると創作活動に支障を来すことになる。新たな音楽が創作されなくなるのは聴く側のファンにとっても大きな損失だと思う。正規のルートで音楽を購入して楽しんでもらいたい」と話しています。