そしてその年、
国に
損害賠償を
求める訴えを
神戸地方裁判所に
起こしました。
当時、喜美子さんは、決意を述べていました。
小林喜美子さん
「裁判を通じて、社会が変わっていくことが大切です。訴えを起こした私たちだけの問題ではない。障害者全体の問題だとして、考えてもらえるように活動していきたい」
意見陳述では寳二さんも思い語りました。
寳二さん
「手術からおよそ60年が経ちましたが、悲しみは今も続いています。友人や知人に子どもがいるのを見ると、悲しくて、寂しくて、歯がゆい思いをします。こんな苦しみを与える差別は許せません」
1審では「除斥期間」の経過で訴えを棄却
しかし、
おととし、1
審の
神戸地裁は、
旧優生保護法を
憲法違反としたうえで、
不妊手術から20
年以上がたっていて
賠償を
求める権利の
ある期間の「
除斥
期間」が
過ぎているとして
訴えを
退けました。
小林さん夫婦は控訴し、2審で改めて、国の賠償責任を認めてほしいと求めていましたが、去年6月、喜美子さんは病気のため亡くなりました。
“裁判官、私の声は聞こえていますか”
その5
か月後、2
審の
大阪高等裁判所で
行われた
意見陳述で、
寳二さんが
訴えたことばです。
寳二さんの意見陳述
「妻とともに60年間、子どもを持てない悲しみと寂しさを抱えて過ごしてきたが、その妻も病気で亡くなり、深い悲しみに暮れている。裁判官の方、私の声は聞こえていますか。私の気持ちを理解して正しい判決をお願いします」
提訴からおよそ4年半が経ち、原告5人のうち、喜美子さんを含め2人が亡くなっています。
寳二さんも最近、体調を崩すことが増えているということで、一刻も早く、国は賠償責任を認めてほしいと願っています。
2審は国の賠償を認める逆転勝訴
そして迎えた2
審判決。
大阪高等裁判所は、
旧優生保護法について「
特定の
障害や
疾患の
ある人を『
不良』とみなし、
生殖機能を
回復不可能にする
手術によって
子どもを
産み
育てる意思決定の
機会を
奪うもので、
極めて非人道的だ」として、
明らかに
憲法違反だと
指摘しました。
その上で、「国が、差別や偏見を助長し、原告らがこの法律に基づく手術であり、権利を違法に侵害するものだと認識するのを、著しく困難にする状況を作り出した。正義・公平の理念に著しく反する事情があり、賠償を求める権利が消滅する『除斥期間』の適用を制限すべきだ」などとして、1審の判決を変更し、国に対して小林さんら夫婦2組と女性1人に、それぞれ1650万円、あわせて4950万円を支払うよう命じました。
厚生労働省は「国の主張が認められなかったものと認識している。今後、判決の内容を精査し、関係省庁と協議したうえで適切に対応したい」とコメントしています。
“亡くなった妻にも伝えたい”
判決を
受けて
寳二さんたちは
会見を
開きました。
寳二さん「この日を待っていた。正しい判決を出していただいて本当にうれしい。これで気持ちが落ち着いた」
その上で、ともに裁判を起こし、去年6月に亡くなった妻の喜美子さんに結果を伝え、一緒に喜び合いたいと話していました。
また、同じく原告の1人で、先天性の脳性まひによる障害がある神戸市の鈴木由美さん(67)も喜びを語りました。
鈴木由美さん
「いい判決で本当にうれしかった。私は普通に暮らしたいだけだったのに、障害があるから子どもが産めないようになった。体の傷は消えても、心の傷は消えない。国は早く謝罪して、悪かったと言ってほしい」
これまでの司法判断は
旧優生保護法をめぐる
一連の
裁判では、これまでに、14
件の
判決が
言い渡され、
去年2
月以降は、
国に
賠償を
命じる司法判断が、
今回も
含めて7
件続いています。
一連の裁判では、司法による救済を求める旧優生保護法の被害者たちに大きく立ちはだかってきたのが「時間の壁」です。
不法行為から20年が過ぎると賠償を求める権利が失われるという「除斥期間」を適用するかが争われてきました。
4年前、全国で初めての判決で、仙台地方裁判所は、旧優生保護法は憲法違反だったという判断を示しましたが、賠償を求められる期間が過ぎているとして訴えを退けました。
その後、「除斥期間」が経過していることなどを理由に全国各地で相次いで原告の訴えが退けられました。
去年 初めて国に賠償命令 「除斥期間」適用しない流れに
こうした
中、
去年2
月、1
審の
大阪地裁が
同様に
訴えを
退けていた
裁判の2
審で、
大阪高裁が
旧優生保護法を
憲法に
違反すると
判断した
上で、
国に
賠償を
命じる初めての
判決を
言い渡しました。
判決では、「国が障害者に対する差別・偏見を正当化し、助長してきたとみられる」と指摘し、原告たちが長年、裁判を起こすのが困難な環境に置かれていたとして「除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」と判断しました。
これ以降、国に賠償を命じる司法判断が、今月16日の札幌高裁など全国で相次ぎ今回で7件目となり、2審の高裁段階ではすべて訴えを認めています。
いずれの判決も国の救済策の手術を受けた人に対して支給される一時金320万円を大きく上回る額の賠償を命じていて、救済制度の見直しを求める声が高まることも予想されます。
時間の壁に新たな判断 “より多くの人救済へ”
さらに
今回の
大阪高裁の
判決では、「
除斥期間」について
新たな
判断が
示されました。
「国が、旧優生保護法が憲法に違反していたと認めた時、または、最高裁判所の判決で憲法違反だと確定したときのどちらか早いほうの時期から6か月を経過するまでは、『除斥期間』の経過の効果が発生しない」と示しました。
この判断について原告の弁護団は、今も、原告らの賠償を求める権利は消滅しておらず、「除斥期間」の効果が発生する時期は将来的に決まるとするもので、今後、より多くの人が救済されると評価しています。
判決後の原告と弁護団の会見
原告弁護団の
団長 藤原精吾弁護士「国は争いをやめ、被害者とちゃんと面会して謝ることが出発点だ。被害は手術を受けた人だけではない。国は障害をもった人が負い目を持って生きる社会をつくってきた。優生保護の問題は終わっていない」
ジェーン・スーさんが「おつかれさま」に込める思い
いま、幅広い年齢層の女性から圧倒的な共感を集めるジェーン・スーさん。書店では特設のコーナーが作られ、インターネットを通して配信される音声の番組・ポッドキャストでは、リスナー総数が18万人を超えるという人気を誇ります。そんなスーさんが、ポッドキャスト番組で毎週リスナーにかけることばが「おつかれさま」。そのひとことにどんな思いを込めているのでしょうか。(聞き手・取材 杉浦友紀アナウンサー)
Source: NHK
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Source: NHK
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