
WHO=世界保健機関の1月11日の週報によりますと、これまでに38か国から「XBB.1.5」の検出が報告されています。「XBB.1.5」についてのデータはまだ限られていて、1月19日の週報によりますと、年末の1週間では「XBB」系統全体で世界各国から報告される新型コロナウイルスのうちの8.36%となっています。
▽過去の感染やワクチン接種で得た免疫から逃れる性質は、予備的な実験のデータでは、これまでのオミクロン株の変異ウイルスと比べて高まっているとしています。 ▽感染した場合の重症度については、臨床データはまだ情報がないとしています。 ただ、重症度の変化につながるとされる変異は確認できていないとしています。 その上で、現状ではデータが限定的だとしながらも「世界的な症例の増加につながる可能性がある」としています。
研究グループは、ワクチンの接種後に、2022年夏以降の第7波で主流だったオミクロン株の「BA.5」に感染した人の血液を使って、「XBB.1.5」に対する免疫の反応を調べました。 その結果、ウイルスを抑える中和抗体の働きは「BA.5」に対する場合のおよそ10分の1にとどまり、免疫を逃れる性質がはっきりしたということです。 また、感染力が高まっているのではないかという結果も示されました。 新型コロナウイルスが人に感染する際には、細胞の表面にある「ACE2」というたんぱく質にくっつきます。ウイルスは人の細胞にくっつきやすいと感染力が高まります。 「XBB.1.5」には新たに「F486P」という変異が加わっています。佐藤教授によりますと、この変異があることで、「XBB.1.5」は細胞の表面のたんぱく質に結合する力が、変異が無いタイプの変異ウイルスと比べて4.3倍になっていたということです。 これまでの変異ウイルスでは「中和抗体を逃れること」と「結合力が上がること」は両立しにくかったのが、「XBB.1.5」は両立していて、感染力も高まっているのではないかとしています。
「免疫をかいくぐる力が高まり、いわば『完成形』だった『XBB』に、さらに変異が加わることで細胞への感染力も高まって、より広がりやすくなっていると考えられる。これほど大きな変異はこれまでにほとんどなかった」 一方、感染した場合の重症度や病原性については、まだよく分かっていません。 感染した人から取った「XBB」のウイルスをハムスターに感染させても、肺の炎症や損傷を引き起こす度合いは、以前のオミクロン株と同じ程度だったと報告しています。佐藤教授は「XBB」では症状を引き起こす力は高まっていないとみられるとしています。
また世界、そして日本でも、これまでのように、ある特定の変異ウイルスがほぼ全てを占めるということにもなっておらず、いわば、さまざまなウイルスが併存する形になっています。 国内では、東京都が1月19日にモニタリング会議で示した資料によりますと、「XBB.1.5」は東京都内でこれまでに22件検出されているということです。1月2日までの1週間では検出される割合は0.3%で、大きく増加している状況ではありません。 東京都のモニタリング会議で出されたデータによりますと、1月初めまでの1週間で検出されている変異ウイルスはいずれもオミクロン株の1つで、多い順に ▽「BA.5」50.6% (2022年夏以降主流) ▽「BQ.1.1」16.2% (「BQ.1」に変異加わる) ▽「BF.7」14.2% (「BA.5」に変異加わる 中国で拡大とされる) ▽「BN.1」10.4% (「BA.2.75」に変異加わる) ▽「BQ.1」3.6% (「BA.5」に変異加わる) ▽「BA.2.75」3.2% (「BA.2」に変異加わる) ▽「BA.2」1.3% (2022年春~夏に主流) ▼【「XBB.1.5」0.3%】 ▽「XBB」0.2%となっています。
1月9日までの2週間あまりの間に入院患者13人の新型コロナウイルスの遺伝子を解析したところ、いずれもオミクロン株の ▽「BQ1.1」が3人から、 ▽「BF.7」が3人から、 ▽「BN.1」が5人から検出されましたが、 ▼【「XBB.1.5」】は検出されなかったということです。 13人の患者は、多くが60歳以上で持病がありましたが、重症化した人はいなかったということです。
「いまのところ、『XBB.1.5』はすぐには広がる状況ではなく、日本での次の感染再拡大の主流になるかは分からない。複数の系統のウイルスが混在する状況が続くのではないか」
「『XBB.1.5』は、これまでのワクチン接種や感染したことによって獲得した、中和抗体による免疫の力を、広く回避する傾向がある。現在、国内の感染は減少傾向に移行しているが、『XBB.1.5』は、再び、新たな流行を起こすリスクがあると考えられる」
濱田特任教授 「アメリカでは感染者数が増えているというわけではなく、『XBB.1.5』が検出される割合が増えているという状況だ。最初はニューヨーク州など東部で多かったのが、西部にも広がってきている。拡大する速度はそれほど速くないようだ。広がっていることは確かなので、時間はかかるかもしれないが、ヨーロッパや日本でも『XBB.1.5』に置き換わっていくことは十分に予想される。置き換わりが進むことで感染者数が急激に増えないか、アメリカの様子も含めて、今後も様子を見ていかないといけない」
濱田特任教授 「日本では第8波がピークアウトしてきているという見方が強くなってきているが、1日あたり数万人の感染者が出る状態は続くだろう。『XBB.1.5』が本格的に入ってくると『第8波』が長引いたり、いったん感染者数が減ったあとで『第9波』になったりする可能性はある。海外の状況を踏まえると、それほど大きな波にはならないのではないかと思われるが、減少傾向だった感染者数が再び増えることは、ある程度、予想しておいたほうがいいと思う。中和抗体があまり効かないようだが、ワクチンがまったく効かないというわけではない。オミクロン株対応ワクチンを接種して、免疫を高めておくことが大切だ。重症化を防ぐためにも、追加接種をまだ受けていない人は早めに接種してほしい」
WHO“世界的な症例の増加につながる可能性”
人の細胞にくっつきやすい変異か
“これまでにほとんどなかった大きな変異”
さまざまなウイルス 併存の状況に
感染の再拡大につながるのか
“オミクロン株対応ワクチンの接種を”