【専門家Q＆A】ウクライナへの戦車供与今後の戦況への影響は? - Easy News

ロシアによるウクライナへの軍事ぐんじ侵攻しんこうから来月らいげつで1年ねんとなるのを前まえに、アメリカやドイツなど欧米おうべい各国かっこくではウクライナへの戦車せんしゃの供与きょうよを検討けんとうする動うごきが広ひろがり始はじめています。

なぜ供与きょうよに踏み切ふみきるのか？今後こんごの戦況せんきょうへの影響えいきょうは？

専門せんもん家かに聞ききました。

ウクライナ情勢じょうせいをめぐってドイツやアメリカが主力しゅりょく戦車せんしゃの供与きょうよを表明ひょうめいしたことについて、安全あんぜん保障ほしょうに詳くわしい防衛ぼうえい省しょう防衛ぼうえい研究所けんきゅうじょの兵頭ひょうどう慎まき治おさむ政策せいさく研究けんきゅう部長ぶちょうに聞ききました。

Q.供与きょうよされる戦車せんしゃの特徴とくちょうは？

A.ドイツ製せいの「レオパルト2」は、旧きゅうソ連それん製せいの戦車せんしゃに対抗たいこうするために設計せっけい・製造せいぞうされた、攻撃こうげき力りょく、機動きどう力りょく、防護ぼうご力りょくの3拍子ひょうしそろった高性能こうせいのうの戦車せんしゃで、ロシア軍ぐんとの戦たたかいにおいてウクライナにとって極きわめて重要じゅうような戦車せんしゃになる。

ヨーロッパやカナダなど約やく15か国かこくが合あわせて2000両りょう使用しようしているので、一定いっていの数量すうりょうの供与きょうよが可能かのうだ。

汎用はんよう性せいもあるので、兵士へいしの訓練くんれんやメンテナンスがやりやすいという利点りてんもある。

今回こんかい、アメリカも自国じこく製せい戦車せんしゃの「エイブラムス」の供与きょうよを発表はっぴょうしているが、「エイブラムス」に比くらべて燃料ねんりょう補給ほきゅうやメンテナンスが簡単かんたんで扱あつかいやすいという特徴とくちょうもある。

Q.なぜ戦車せんしゃの供与きょうよに踏み切ふみきったのか？

A.現在げんざいの戦況せんきょうは、局所きょくしょ的てきには一進一退いっしんいったいの攻防こうぼう戦せんが続つづいているが、全体ぜんたいとしてはこう着こうちゃく状態じょうたいにあり、戦闘せんとうの長期ちょうき化かが懸念けねんされている。

こう着こうちゃく状態じょうたいが続つづくと、犠牲ぎせいの拡大かくだいが続つづいていくことになるので、欧米おうべい諸国しょこくとしてもこのまま戦争せんそうが長期ちょうき化かするのではなく、早はやく決着けっちゃくさせるために、より一層いっそう攻撃こうげき的てきな兵器へいきを供与きょうよする必要ひつように迫せまられたのではないか。

ただ、ウクライナは300両りょうを入手にゅうしゅできないと戦況せんきょうを大おおきく変かえることにはならないと主張しゅちょうしている。

アメリカ、イギリス、ドイツなどが表明ひょうめいしている数かずは、まだ300両りょうには達たっしていないので、ドイツ製せいの戦車せんしゃを保有ほゆうしているほかの欧州おうしゅう諸国しょこくも含ふくめて、どの程度ていどの数かずをウクライナに供与きょうよするかが大おおきな焦点しょうてんになる。

Q.ウクライナ軍ぐんはいつ戦車せんしゃを使つかえる？

A.戦車せんしゃは補修ほしゅうや整備せいびなどを行おこなってウクライナに輸送ゆそうすることになる。

さらに兵士へいしの訓練くんれんなども行おこなわないといけないので、実際じっさいに戦場せんじょうで使用しようできるまでには数すうか月かげつ程度ていどかかるのではないかとみられる。

ロシア軍ぐんは春はるにも大だい規模きぼな攻勢こうせいを仕掛しかけてくるのではないかと予想よそうされているが、このタイミングに間に合まにあうのかどうかも今後こんごの注目ちゅうもく点てんだ。

Q.戦車せんしゃの供与きょうよが戦況せんきょうに与あたえる影響えいきょうは？

A.いまロシアはウクライナ東部とうぶ2州しゅうの完全かんぜん制圧せいあつを最さい優先ゆうせんに戦闘せんとうを行おこなっているとみられ、東部とうぶ戦線せんせんは両りょう軍ぐんの消耗しょうもう戦せんになっている。

ウクライナ側がわが供与きょうよされた戦車せんしゃを東部とうぶで使用しようするとロシア軍ぐんの攻撃こうげきが激はげしくて損耗そんもうしていく可能かのう性せいがある。

このためウクライナ側がわは、比較的ひかくてきロシア軍ぐんの攻撃こうげきが手薄てうすな南部なんぶなどで戦車せんしゃを使つかった奪還だっかんの動うごきを見みせてくるのではないかと現時点げんじてんでは予想よそうしている。

Q.ロシアの対応たいおうは？

A.どの程度ていどの数かずの戦車せんしゃが、いつ戦場せんじょうに投入とうにゅうされるのかを見極みきわめながら、大だい規模きぼ攻勢こうせいをいつどの場所ばしょで行おこなうか検討けんとうに入はいっていくのではないか。

最さい新鋭しんえいの欧米おうべい製せいの戦車せんしゃが戦場せんじょうに投入とうにゅうされることに対にたいして警戒けいかい感かんを高たかめていると思おもわれるので、それに対抗たいこうするような形かたちで大だい規模きぼ攻勢こうせいを早はやめることが考かんがえられるほか、戦車せんしゃはポーランドなどから陸路りくろで鉄道てつどうなどを使つかってウクライナに輸送ゆそうされるとみられているので、そこに対にたいする攻撃こうげきなどもありうるのではないか。

Q.ロシアによる核兵器かくへいき使用しようの可能かのう性せいは？

A.核かく使用しように関にかんしては一定いってい程度ていど警戒けいかいする必要ひつようがあるが、いまロシアが行おこなおうとしている大だい規模きぼ攻勢こうせいは、30万まん人にんの部分ぶぶん動員どういんの戦力せんりょく化かが完了かんりょうするタイミングで行おこなわれるとみられている。

当面とうめんは、核かくをすぐに使用しようするということではなくて、通常つうじょう戦力せんりょくを用もちいて戦況せんきょうを大おおきく立て直たてなおしていく、そして東部とうぶ2州しゅうの完全かんぜん制圧せいあつ、これを実現じつげんしようとしているのではないか。

大だい規模きぼ攻勢こうせいをかけてもロシアが戦況せんきょうを立て直たてなおすことができず、南部なんぶのドンバス地方ちほうやクリミア半島くりみあはんとうも含ふくめてウクライナ側がわの奪還だっかんの動うごきが強つよまったときには、核かく使用しようの可能かのう性せいは相対そうたい的てきに高たかまる可能かのう性せいはあると思おもうが、現時点げんじてんですぐにロシアが核かくを使用しようするという兆候ちょうこうは見みられないと思おもう。